助教授就任の御挨拶――名市大精神医学教室の一員として
2004年4月1日付で、名古屋市立大学精神医学教室の一員に加わらせていただきました明智と申します。この機会をお借りしまして、僭越ではありますが、自己紹介と抱負を述べさせていただきたいと思います。
私は平成3年に広島大学を卒業しました、まだまだ若輩の徒であります。大学卒業後は、広島大学神経精神医学教室に入局し、その後、広島大学医学部付属病院、日本医科大学付属病院、そして国立呉病院・中国地方がんセンター(現国立病院呉医療センター)での研修を経て、社会保険広島市民病院(現広島市立広島市民病院)に勤務致しました。以降、平成7年から平成16年に至るまで、国立がんセンターで、一貫して「サイコオンコロジー(精神腫瘍学)」という領域の臨床および研究に従事して参りました。サイコオンコロジーは、「がんが患者さんとそのご家族の心理面に与える影響」と「患者さんの心理・社会・行動的側面が、がんの罹患、生存などの身体的転帰に与える影響」という2つの大きな側面を明らかにすることを目的として生まれた、わが国では産声をあげたばかりのまだまだ新しい学問領域です。国立がんセンターにおける主たる業務は、文字通り多くのがんの患者さんとそのご家族の心を支えること、そして希望を支えることを臨床活動および研究活動を通して体現することにありましたが、中でも治癒が望めない進行・終末期のがんを患われた患者さんからは、医療・医学とは何か、医療者がなすべきことは何か、人の心を支えるということはどういうことなのか等、実に多くのことを考えさせていただく機会をいただき、そして多くのことを教えられたように思います。当たり前のことではありますが、お一人お一人が個性を持ち、固有の生活史を持ち、その人生の中で病を得るという体験をされていらっしゃいますので、病の与える影響や苦悩は皆さんで異なり、病気や症状ではなく、「病を抱えた人」を診ることの大切さと難しさを実感させていただきました。
私自身は、国立がんセンターでサイコオンコロジーに没頭しており、自分の方向性として大学という職場を考えたこともなかったのですが、古川教授から、「名市大で是非サイコオンコロジーを」、「国立がんセンターでの経験を生かして名市大の教室の発展に力を貸して欲しい」と、とても熱心にお誘いいただき、このたび、名古屋の地で働かせていただくという機会に恵まれることになりました。まだまだ、名市大に赴任させていただいていくばくも経っておりませんが、それでも、一心に患者さんの診療にあたられている大学や関連病院の諸先生方の誠実さや真摯さ、名市大で構築されつつあるすばらしい臨床教育のシステム等を目の当たりにさせていただき、良医を育む名市大の伝統を肌で感じさせていただいております。抱負などという大それたものではありませんが、諸先輩・諸先生方のご援助をいただきながら、地域の方から「名市大精神科にかかれば安心だ」と言っていただけるような医師をこれまで以上に多く輩出し、また「名市大精神医学教室で学べば、最高の臨床教育が受けられ、最高の臨床医になれる。臨床に役立つ研究もできる」と多くの方に言っていただけるような教室を作っていくことの一翼を担わせていただくことができましたら幸甚に存じます。
私自身、精神科医としてはやや偏った道を歩んできた若輩ではありますが、懸命に学び続けながら、初心を忘れず、そして今後は、伝統ある名市大精神医学教室の一員として、教育、診療、研究の充実に努力し、サイコオンコロジー及び精神医学の発展のために、微力ながら専心努力いたす所存でございますので、諸先輩・諸先生方のご指導ご鞭撻を賜りますよう謹んでお願い申し上げます。