名古屋市立大学精神医学教室は、卒前教育(医学部教育)、卒後教育(ローテート研修およびレジデント研修)、および大学院教育を行っている。なかでも、レジデント研修で優秀な臨床家を、大学院で優秀な臨床研究者を養成することが名市大精神医学教室の社会的使命であると考えている。
一般医学における精神医学の教育
卒前教育
卒前教育のコースGIO
(General Instructional Objective: 全般教育目標)は、「心の病への偏見をなくす」ことであり、すなわち
「心の病を理解するために、種々の医療現場での心の病の実態を知り、心の病に苦しむ人々と語り合うことが出来るようになり、彼らへの偏見をなくす」
ことである。この目標のため、以下の講義および実習を、広く関連病院・施設の協力を得ながら行う。
名古屋市立大学病院では、シドニー大学と相互交流協定を締結しており、2003年度からローテート研修医2-3人を2週間、シドニー大学関連病院での研修に出しています。精神科関連の海外実習も可能です。2003年度は、大学全体で2人の枠の中で精神科の鈴木幸恵Drが選ばれて、Westmead子供病院で2週間研修をしてきました。その研修記と、写真を見るには、ここをクリック。
2004年夏には、同じく研修医の鈴木美乃Drが、シドニー大学のPrince Alfred Royal
Hospitalの成人精神医学部門で2週間、見学研修をしてきました。鈴木Drがまとめてくれた、研修記を見るには、ここをクリック!
精神医学の専門教育
レジデント研修(精神科専門医養成コース)
卒後2年間のローテート研修を終えた後、
卒後3年目から、精神科の専門医となる医師のためのプログラム、すなわち精神科専門医養成コースを提供する。そのコースGIOは、「general
psychiatristになる」ことであり、すなわち
「general psychiatristとして出会う患者の一人一人に最善の精神医療を提供できるように、精神医学全般の知識ならびにEBMの原則を理解し、良識的精神療法を基盤として実践的に薬物療法精神療法環境療法を統合した治療を提供でき、
常にhelping
professionalとして共感的態度で診療できる」
ために、以下のユニットを設ける。
具体的なレジデント研修の枠組みとしては1-2-3+アルファ方式を原則とする。
1-2-3とは、大学でのレジデントと初期赴任2カ所(原則として総合病院精神科と単科精神科病院)をそれぞれ1~2年経験する。よって最短3年、最長6年のプログラムである。
ただし、第1期(大学)と第2期(外病院)は週1日ずつの入れ子式にすることにより、レジデント1年目で診た患者様をなるべく長く診れるように配慮する。
+アルファとは、オプションとして、リエゾン・コンサルテーション精神医学3~6ヶ月、児童精神医学1~12ヶ月、精神科スーパー救急病棟6~12ヶ月を組み込むことが出来る。リエゾンは大学病院でこれに専念できる期間を設けることで行う。児童精神医学の研修施設は三重県立小児心療センターあすなろ学園である。精神科スーパー救急の研修施設は千葉県精神科医療センターである。
おそらく何科でもその傾向があると思うが、精神科でも治療場面によって疾患構成が大きく異なる。複数の治療場面を経験して初めてgeneral
psychiatristになれる。
専門研修の一部として、国立がんセンター東病院の精神腫瘍学研究部に1週間程度の実習で、何人もの研修医がお世話になっています。その実習報告書を読んでいただくと、いかに勉強になるかが分かります。
また、静岡県にあるてんかんセンターへの実習も可能である。 これらのサブスペシャルティの施設は、2つめの初期赴任先として組み込むことも出来る。
臨床留学先として、University of British Columbia (Vancouver), New South Wales
University (Sydney), Southampton University (UK)も可能
名市大の精神科専門医養成コース(レジデント研修)の途中もしくは終えた時点で、精神神経学会認定専門医および精神保健指定医を取得できる。しかしこれらの取得のみを目標と考えるならば、名市大精神科レジデンシーで専門研修をするメリットは少ないであろう。名市大精神科レジデンシーでこそのメリットは、以下のようにまとめることが出来よう。
1 知識
1.1 標準と共通を学ぶ
1.2 情報をセレクトする能力を身につける
2 技能
2.1 まずじっくりと基本を
2.2 ディスカッション・プレゼンテーションしながら
2.3 教育関連病院(単科精神科病院、総合病院;
あすなろ学園、精神科スーパー救急)と得意分野で補い合い、このシステムでぐるっと回れば、general psychiatristになれる
3 ヒューマンネットワーク
3.1 多くの同期と切磋琢磨
3.2 同門の先輩が300人近く、後輩も
4 専門研修のあと
4.1 さらなるスペシャルティへ
4.2 研究もできる
4.3 Bestを求める人に触れる
大学院
臨床に誠意を持って立ち向かえば立ち向かうほど、自分の臨床を改良させるための、またより多くの患者に益するための研究を行いたいという向上心が芽生える。そのような医師はgeneral
psychiatristとしての経験を積んだ後、たとえ臨床研究を生涯の道にしなくとも、大学院の門をたたいてくれると良い。
大学院のコースGIOは「自らの臨床上の疑問点を研究により明らかにすることを通して人類の医療に貢
献するために、臨床研究のdesign, measurement & analysis (臨床疫学、精神症状測
定学、統計学)を理解し、当該専門領域における高度な臨床技能を習得し、かつ、医 療者として専門や専攻した研究内容に偏らない総合的な姿勢を保つ」ことである。従って、将来像の6重点領域のいずれかに専心していただくことになる。
レジデント研修ならびに4年間の初期赴任(原則として総合病院精神科2年、単科精神科病院2年)を終え、精神保健指定医の資格を取得した医師が、大学院に入学するのが原則である。
ただし、名古屋市立大学大学院は社会人大学院生を受け入れているので、初期赴任の途中での入学も可能である。
臨床研究、サイコオンコロジーについては国立がんセンター精神腫瘍学研究部と密接なコラボレーションを行っています。
まとめ
以上を時系列で並べますと、以下のような年次計画になりますが、これはあくまで一例です。各人のニーズに応じて、バリエーションが可能です。
また、当教室としては単線のプログラムを考えておりません。ローテート研修についても名市大病院のプログラムを素晴らしいと思う方が集まり、また2年後にはそれぞれの道に進んでゆかれる。その後、われわれが提供できる臨床研修を受けたい若手医師が日本中から集まってきて、また各地へ戻ってゆく; 同様に、われわれが提供できる臨床研究の訓練を受けたくて、日本中の若手精神科医が集まってきてくれる、そのような教室を目指しています。