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精神科診察診断学


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名市大精神科(Japanese)
 
Department of Psychiatry
Nagoya City University
Medical School
Mizuho-cho, Mizuho-ku, Nagoya
467-8601 JAPAN
Phone: +81-52-853-8271
FAx: +81-52-852-0837
 

精神科診察診断学:エビデンスからナラティブへ』

編集:古川 壽亮/神庭 重信

医学書院、2003年

若手臨床家のための最良のスタンダードテキストブックを目指した,精神科診察診断の画期的な手引書。2002年時点での、名古屋市立大学精神医学教室と、山梨大学精神神経学教室との、総力を結集しました。
精神症候の同定と診断のために必要な面接技法や臨床判断のポイントを中心に,臨床測定学の概念や各種評価尺度から,Diagnostic Formulationやナラティブ医療まで,精神科領域における診断と評価に関するすべてを網羅しています。

 

目 次

第I編 精神科面接法-よりよい医師-患者関係の確立に必要なコツ
 1章 精神科面接の技法
 2章 精神科面接の態度
 3章 精神科診断面接 
 4章 特別な配慮が必要な患者への接し方 
第II編 精神科診断学 
 5章 診断学総論-なぜ分類するのか 
 6章 Evidence-Based Diagnosisの基本 
 7章 誤診の心理 
 8章 器質的原因を見逃さないために 
第III編 精神症候の同定と診断 
 9章 意識 
 10章 認知 
 11章 気分 
 12章 幻覚・妄想 
 13章 不安 
 14章 身体症状 
 15章 食行動 
 16章 性 
 17章 睡眠 
 18章 衝動行為 
 19章 児童・青年期の精神症状 
 20章 アルコールほかの物質使用 
第IV編 診断の定式化-患者のストーリーを読む 
 21章 Diagnostic formulationについて 
 22章 診察の進め方と記録のしかた-予診,初診,入院報告,退院報告 
第V編 治療の進展に伴うアウトカムの評価 
 23章 重症度および重症度の変化の評価 
 24章 経過の診断 
付録1 臨床測定学-信頼性,妥当性,反応性 
付録2 DSMとICDの歴史 
付録3 評価尺度 
索引
 
緒言より

「一人の患者について必要なことを知り尽くそうとする終わりのない努力・・・」(山下格)を私たち精神科医はその職歴の間に何百回と繰り返すのだろう。今、そのキャリアの入り口にいる若人に、精神科的な診察や診断について何を伝えるべきか、編者二人とその精神医学教室の現時点でのまとめが本書である。

その第1の特徴は、初学者向けに具体的なアドバイスを惜しまなかった点である(特に、第I編や第IV編)。私たちは決して本書を精神科面接のマニュアルとしては意図しなかった。しかし、時にお節介と思われるような具体的指摘なしには、初学者が時に道に迷うことを私たちは知っている。

第2の特徴は、あくまで実際の治療と診療の流れの中で、精神科面接を位置づけようとしたことである(特に第I編、第IV編、第V編)。本書は精神療法の教科書ではない。しかし、治療的なまなざしなしには診断面接も進まないことは明らかであるので、基本的精神療法の説明を欠かすことは出来なかった。精神療法と言えば精神分析というような時代は終わった。しかし、認知行動療法が出来なければ精神療法が出来ないのではなく、すべての精神科医---いや、すべての医療者---に共通すべき精神療法がある。また、すべての医療過程はアウトカムの評価があってこそ、改善してゆく。狭義の診断だけでなく、治療経過の評価にもスペースを割いた(第V編、付録3)所以である。

本書の第3の特徴は、精神科診断学の理論的骨組みをevidence-based medicine(EBM)の立場から提供している点である(第II編、付録1)。このような試みは世界でも初めてであると思う。上記第1、第2の基盤の上に、より厳密な診断過程を進めることが出来るようになることが望ましい。鑑別診断リストを得られた情報の尤度比に応じて改変してゆくこと---すでに古から医師が無意識的に行ってきた営為を明示的に行えるように、第III編では症候ごとに、現時点で入手可能なエビデンスを米国精神医学会のDSM-IVに準拠しながらまとめた。

そして、これらの特徴のすべては患者のストーリーを読むこと(土井健郎)に収斂して行くべきものであると、編者二人は信じている。本書の第4の特徴は、従って、narrative-based medicine (NBM)である。冒頭に掲げた山下格の言葉は「患者がどのような素質を持ち、どのような生活経験を積んで、どのような性格傾向を有し、現在どのような問題にどんな取り組み方をし、周囲が彼とどんな関わりを持っているか、そして彼の罹患した疾患がいかなる性状のもので、彼にどんなときにどんな影響を及ぼしているかを出来る限り詳細に、生き生きと具体的に、時間の経過を追って確かめてゆくことが必要であると言えよう」と続く。Narrative-based medicine (NBM)とは、個人本意の医療を行うために、EBMと並ぶ両輪の一つであるといえるし、EBMそのものであるとも言える。

このような特徴に加え、精神科面接のこつや、誤診から学ぶのコラムを設け、読んで楽しく、かつ考えさせられることの多い入門書にしようと著者一同、努力した。時あたかも2004年度からは精神科ローテートを含む卒後研修が必修化された。先進国国民のQOL損失の実に4分の1が精神疾患によると推測されている(WHO/Harvard大学)。本書は、将来必ずしも精神科に進まない精神科ローテート研修医にも、精神医療を一生の仕事にすることを決意した精神科研修医/レジデントにも、お役に立てると信じている。

私たちの努力が実を結んでいるかどうか、読者諸兄のご審判を仰ぎたい。

古川壽亮
神庭重信

 

 





 ©1999-2005 Dept of Psychiatry and Cognitive-Behavioral Medicine, Nagoya City University Graduate School of Medical Sciences